テキサスのUTオースティンが志願者数で新記録!大学間格差がもたらす社会的影響とは?PART②



2024年秋、UTオースティンが志願者数で新たな記録を達成しましたが、アメリカ全体では高等教育への信頼が揺らいでいるのが現状です。多くの若者が大学を中退するか、そもそも入学しない選択をする中で、「大学は本当に何のためにあるのか?」という問いが浮かび上がります。前回のニュースレターではヨーロッパの大学システムを取り上げ、その歴史的背景に触れました。今回は、アメリカの大学システムの成り立ちを探りながら、大学間の格差が社会に与える影響について深掘りしていきます。

アメリカの大学はなぜ50年程度で世界トップクラスの大学になったか?-工業化と経済成長

アメリカの大学は全体的には平均的なレベルかもしれませんが、ハーバード、スタンフォード、シカゴ大学といった超一流校は世界中から学生を惹きつけています。その理由は、これらの大学が研究機関としても圧倒的な強さを誇っているからです。

1880年代、アメリカは研究面ではまだ弱い国でしたが、わずか数十年後には世界の研究をリードする存在に変貌しました。その背景には、南北戦争後の工業化と経済成長が大きく影響しています。以前は2~3年の固定カリキュラムしか提供していなかった大学も、戦後になると職業に直結する専門的な教育を重視する新しいモデルが登場しました。

シカゴ大学のような新しいカレッジが設立され、トップクラスの教授陣を集める競争が激化しました。1890年にロックフェラーの資金で設立されたシカゴ大学は、他の大学から優秀な人材を引き抜き、一流の教育機関として地位を確立しました。この競争が、20世紀半ばにはアメリカの大学にエリート層を形成し、優秀な学者や学生を集める原動力となったのです。

政府の助成金が広げる大学間格差

冷戦時代には、アメリカ政府が科学技術のイノベーションを加速させるため、最高の研究を行う大学に資金を集中させる助成金制度が確立されました。この資金集中は今でも続いており、シカゴ大学が年間約3億5千万ドルの連邦研究費を受ける一方、シカゴ大学よりも古い歴史を持つClark大学はその100分の1に過ぎない約340万ドルしか得ていません。こうした格差こそが、アメリカの大学の実力主義的な特徴を象徴しているのです。

富裕層支援でさらに広がる大学間の格差

アメリカの大学システムの巧妙さは、その資金が政府からだけでなく、富裕層の支援によって成り立っている点にあります。裕福な家庭は自分たちの子供をエリート大学に通わせるだけでなく、授業料を全額支払い、多額の寄付までしています。これが大学の運営を支え、さらにその名声を高める力となっているのです。特に「レガシー候補」と呼ばれる、親が卒業生である学生たちは、入学前後に寄付を行うことも多く、その結果、大学の地位はますます高まります。一方、低所得の学生は、奨学金などで授業料が免除されることが多く、その負担は軽くなります。この仕組みが、アメリカの名門大学をさらに輝かせているのです。

大学間格差がもたらす恩恵 – 公共財としての役割

アメリカの大学間格差、特にトップ校とその他の大学の間で広がる違いが、社会全体にどんな影響を与えているのでしょうか?特に、スタンフォード大学のような名門校がどのような変化をもたらしているのかに注目してみましょう。スタンフォード大学は、最先端の研究で知られていますが、その背後には連邦政府からの資金援助と、多くの富裕層の個人たちからの支援があります。富裕層の支援があることで、新しい技術や革新が生まれ、例えば新しいワクチンの開発など、私たち全員の生活が向上する可能性があります。



つまり、アメリカの大学間格差は単なる不平等ではなく、富裕層の資金が公共の利益を生み出し、社会全体に還元される仕組みでもあるのです。

とはいえ、コロンビア大学の経済学者Urquiolaは、アメリカが先進国の中で最も不平等な国だと指摘し、教育制度の不平等と国全体の不平等が単なる偶然ではないことを示唆しています。それならば、なぜトップ大学は世界トップクラスの知識と数十億ドルの寄付金を、より多くの学生に提供し、国全体の不平等を減らすために積極的に活用しないのでしょうか?企業が売れる商品に対して供給を増やすのと同じように、教育も広く提供し、多くの人々がアクセスできるよう整備し、授業料を徴収した方が大学側もメリットがあるのではないのでしょうか?

こうした疑問について、次回のニュースレターで経済学の観点から深く掘り下げて解説しますので、お楽しみに!

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