テキサス州の職場における法律や規定④:「採用と解雇」【QUICK USA】



アメリカでは中央政府(連邦政府)と地方政府(州政府)の権限を分けて統治する国の制度(フェデラリズム)が採用されているため、州ごとに法律が異なります。アメリカ合衆国憲法は、連邦政府と州政府の権限を明確に分けており、特定の分野(通商、外交、防衛、移民など)は連邦政府が管轄し、それ以外の多くの分野は州政府が独自に立法できるものとしています。各州はすべて独自の歴史、文化、経済的背景などを持ち、地域のニーズや価値観に応じた法律を制定しています。

テキサス州とその他の州の雇用上における法律や規定などの違いについて4回に渡ってシリーズでご紹介していますが、今回は第4弾として「採用と解雇」についてお話しさせていただきます。

過去の記事はこちら↓

★今回ご紹介させていただく法律は2024年7月現在のものとなります。

【採用における規定】

「Ban the Box」法について

企業の採用過程で求職者の犯罪歴を確認することを禁止する「Ban the Box」法はアメリカ国内で広がりを見せており、カリフォルニア州、コロラド州、コネチカット州を含む37の州で現在適用されていますが、テキサス州には州全体での「Ban the Box」法はありません。

しかし、州内のいくつかの管轄区域では、犯罪歴調査に関する規制があります。ダラス郡、トラヴィス郡、サンアントニオ郡では、市または郡の職員に対して「Ban the Box」が適用されており、オースティンには、民間および公職に適用される「Ban the Box」条例があります。またオースティンでは、従業員15人以上の民間雇用主は、犯罪歴に関する質問を含む求人応募書類を使用することはできません。

バックグラウンドチェックについて

また州によっては過去の犯罪歴チェックに対して制限を設けていませんが、テキサス州ではカリフォルニア州やニューヨーク州でも適用されている7年ルールが有効で、処分、釈放、仮釈放から7年以上経過した前科をリポートすることは認められていません。この7年間の制限は年俸75,000ドル以上の職への応募者には、適用されません。75,000ドル以上の給与を支払うポジションの場合、雇用主は応募者の犯罪歴を18歳まで遡ってチェックすることが可能です。

さらに、テキサス州法では、裁判所命令により抹消された犯罪歴の有無を応募者に開示することを義務付けていません。また、未成年者の犯罪歴は保護されているため、応募者が18歳になる前の犯罪歴が犯罪歴調査で明らかになることはありません。 

ちなみにオースティンでは、従業員15人以上の雇用主は、候補者にオファーレター提示されるまで、バックグラウンドチェックを行うことはできません。この規則に違反した場合、1件につき500ドルの罰金が科せられます。

参照
https://www.testgorilla.com/blog/ban-the-box-laws-by-state/

https://www.robwiley.com/background-checks.html#:~:text=Many%20states%20have%20laws%20restricting,for%20positions%20paying%20under%20%2475%2C000.https://www.backgroundchecks.com/our-data/coverage-map/texas-state-background-check

E-Verify登録に関する規定

E-Verifyはアメリカ合衆国国土安全保障省(DHS: Dept. of Homeland Security)が提供する、企業が米国人や外国人の従業員が米国で働く資格があるかどうかを判断できるオンラインシステムです。テキサス州では州機関および契約者の登録は必須となっています。アリゾナ州ではすべての雇用主に登録が必須となっており、一方ニューヨーク州やカリフォルニア州では登録は任意となっています。

参照
https://www.ncsl.org/immigration/state-e-verify-action



【解雇およびレイオフ】

解雇通知に関する規定

企業が工場閉鎖や大量解雇をせざるを得ない場合、テキサス州では連邦の定める労働者調整再教育通知法(WARN Act: The Worker Adjustment and Retraining Notification Act)に従い、雇用主は影響を受ける従業員に対して60日前に通知することが義務付けられています。また 雇用主は、レイオフが永久的か一時的か、また一時的な場合には予想されうる期間を従業員に通知する必要があります。さらにカリフォルニア州、イリノイ州、メリーランド州、二ューヨーク州などでは連邦法に加えて追加の要件を持つ各州独自のWARN法(mini-WARN Act)の適用がなされています。

参照
https://www.dol.gov/general/topic/termination/plantclosings

https://gtm.com/business/new-york-mini-warn-act/#:~:text=The%20Worker%20Adjustment%20and%20Retraining,mass%20layoff%20or%20plant%20closing

人事・労務のご相談

今回はテキサス州の「採用と解雇」についてクローズアップして紹介させていただきました。アメリカでは州ごとに法律が異なっていますので、他の地域にお住まいの方は、ぜひご自身がお住まいになっている地域の法律と比較してみてください。クイックUSAはアメリカでのお仕事探しのお手伝いをする人材紹介・派遣サービスを提供していますが、企業に対しては採用のお手伝いの他、ハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成など人事労務関連のご相談も承っております。下記クイックUSAまで、お気軽にご連絡ください。

 
 

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【監修】
酒井謙吉 Ken Sakai
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.
https://pacificdreams.org/

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