テキサスとピアノの歴史〜フォートワース開催のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールとは?

テキサス州フォートワースで4年に一回行われる、米国のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール(Van Cliburn International Piano Competition)は日本の辻井伸行さんが史上初の優勝をしたことでも有名である。1962年に創設され、設立当時のチャイコフスキー国際コンクールに負けない国際コンクールを目指した。

このコンクールの名前ともなっているヴァン・クライバーン。彼は長身でガッシリとした巻き毛のTexanだった。そして、テキサス人としてアメリカ史上最も有名なクラシックピアニストであった。

1958年4月、クライバーンは冷戦のさなかにモスクワに赴き、チャイコフスキーの協奏曲第1番を演奏して、新設のチャイコフスキー国際ピアノコンクールで金賞を獲得した。このコンクールは、ロシアの文化的優位性を示すために創設されたもので、最初の宇宙衛星スプートニクの打ち上げという科学的勝利からわずか半年後のことであった。

クライバーンの演奏は、水晶のようなタッチ、湧き出るような歌声、8分間に及ぶスタンディングオベーションを呼んだ。「ヴァンはまるで天使のような容姿と演奏だった」と、ロシアのピアニスト、アンドレイ・ガヴリロフが後に回想している。“彼は最高か?” フルシチョフはこう答えたと言われている。“それなら彼に賞をあげよう!“。クライバーンはモスクワで歓喜のファンたちに囲まれた。彼のコンサートでは、女性たちが涙を流し、気を失ったという。

クライバーンの功績は、世界中の新聞の一面に報道された。クライバーン氏が帰国すると、ニューヨークのテロップが流れ、数年後にはビートルマニアに変身するような、悲鳴にも似た熱狂的な喝采を浴びることになる。1958年5月、『タイム』誌は「ロシアを征服したテキサス人」というバナーとともに、彼を表紙に据えた。

彼は2013年2月27日にフォートワースの自宅で死去した。78歳であった。

2022年のコンクールでは、韓国出身のYunchan Limが優勝。当時18歳で最年少記録を更新した。

ソース:WashingtonPostClassicalMusic

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