関税引き上げが招く米国経済の転換期と、テキサス・日本企業への影響とは?



2025年4月2日、トランプ前大統領の発表した新たな関税政策は、米国経済全体に深刻な影響を与えました。この政策により、すべての輸入品に最低10%、一部品目には最大50%の関税が課され、特定の国からの輸入に対してはさらに高率の関税が適用されています。

特にコーヒー(ブラジル・コロンビア)、チョコレート・カカオ製品(コートジボワール、エクアドル、ガーナ、インドネシア、マレーシア)、オリーブオイル(スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、アルゼンチン)、砂糖(ドミニカ、ブラジル、フィリピン)などの食品が影響を受け、価格の上昇に直結しています。

また、メキシコやカナダからの輸入品にも25%の関税が課されており、牛肉、豚肉、乳製品、自動車部品、アボカド、ビール、テキーラなど多岐に渡る品目の値上がりが懸念されています。さらに、中国からの履物・玩具・衣料品、EU諸国のワイン、英国のスコッチウイスキー、ベトナムからの家具なども高い関税対象となり、消費者物価を押し上げています。

ゴールドマン・サックスは、これらの影響を踏まえ、今後12か月以内に米国が景気後退に陥る確率を35%と予測しています。

米国経済:インフレと買い控え、FRBのジレンマ

関税によるコスト転嫁により、食料品や日用品、自動車、電子機器などの価格が高騰しています。消費者は支出を控え始め、生活必需品以外の購買が減少。スターバックスのコーヒー、リンツのチョコレート、スペイン産オリーブオイル、ジープ・コンパス、ソニーのテレビなどが価格上昇の象徴的な例です。

FRB(連邦準備制度理事会)は、インフレ抑制のため利下げに慎重ですが、企業活動と雇用への悪影響も無視できず、2025年後半には小幅な利下げまたは据え置きの可能性が高いと見られます。

スタグフレーションの兆し

物価が上昇する一方で、景気の拡大が停滞する「スタグフレーション」への移行が懸念されています。製造業や輸入依存企業の活動が鈍化し、雇用成長も停滞。高コスト構造と買い控えが重なり、米経済の成長ポテンシャルが抑制されています。



テキサス州の強さと揺らぎ

ダラス・フォートワース地域は、法人税の低さや州のビジネス環境の良さに支えられて、引き続き強い投資先と見られています。物流、IT、エネルギー、ヘルスケア分野は好調ですが、家具、アパレル、外食、製造業などの輸入依存型ビジネスはコスト上昇と供給難に直面しています。

日本企業への影響と対応戦略

▼ 影響を受けやすい分野:

- 飲食・食品(本マグロ、抹茶、オリーブオイル、チョコソースなど)
- アパレル・雑貨(ユニクロ衣料、無印雑貨、中国製玩具)
- 自動車・電子機器(ホンダ、トヨタの一部モデル、iPhone、PS5、Samsung製品)
- 家具(IKEA棚、アシュレイ家具のベトナム製テーブル、収納ラックなど

▼ 有利な分野:

- IT、教育、医療サービス(ローカル調達)
- 日系企業連携による建築・設計
- 在米日本人向けの特化型サービス(塾、介護など)

2025年から2026年にかけての経済見通しと想定行動

2025年前半は、高関税とインフレの影響により消費者の買い控えが顕著になると予想されます。このような経済環境下では、現金の確保や新規投資の抑制、リスク分散などが想定されます。2025年後半から2026年には、金利が据え置かれた状態から将来的な緩和への期待感が高まる見通しもあり、テキサス市場では小規模な事業再開や進出も想定されます。そして2026年には、景気が調整局面に入り、為替も円安傾向の可能性も否めません。同時に更に本格的な事業進出や再投資を行う好機と考えられ、より積極的な展開が想定されます。

経済の不確実性が高まる中、日本企業は情報収集と慎重なタイミング判断が鍵となります。特にテキサス州は、今後も重要な進出候補地として注目が集まる地域です。

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