テキサスにおけるインフレと金融政策の未来
/インフレの終焉が見え始めた?
これまで米国ではコロナ不況以降なぜインフレだったか、インフレ要因となってきた人手不足など労働市場の現状についてニュースレターでも取り上げてきました。
これらのこれまでのマクロ経済動向、最新の経済指標を踏まえて8/24のパウエル議長のジャクソンホールでの講演内容を聞くと、「金融政策を調整する時が来た」という発言に非常に納得がいくものだと思います。2年余りにわたって続けてきたインフレとの闘いが終わりに近づきつつあるようです。
近い将来の金融政策の展望
FRBは過去2年間にわたり、合計11回の利上げを行いました。この引き締め政策は、総供給と総需要のバランスを回復させ、インフレ圧力を和らげる目的があります。労働市場の過熱が少しずつ落ち着いてきたとはいえ、FRBは景気減速への警戒を怠りません。特に、インフレが再加速するリスクが減った一方で、雇用悪化のリスクが増大しているという点にも注目しています。
インフレ期待の重要性
失業率の急上昇を伴わずにインフレ率が低下した理由の説明の中で、パウエル議長はインフレ期待の重要性について言及しています。総じて、パンデミックによる歪みの解消、FRBの総需要の抑制への取り組み、インフレ期待のアンカー(安定)がインフレを2%目標に向かう持続可能な道に乗せるために一体となって機能したことを強調し、「労働市場の強さを維持しつつディスインフレを達成することは、インフレ期待がアンカー(安定)されている場合にのみ可能であり、それは中央銀行が時間をかけて2%のインフレを達成するという公共の信頼を反映している」と発言しています。
インフレ期待の役割
インフレを抑制するうえで将来のインフレ率に関する期待は重要な役割を果たします。見通しが消費や投資に関する決定を左右し、今日の物価や賃金に影響を与えるためです。先進国では、短期的なインフレ期待が主要なインフレ・ダイナミクスの原動力となっていますが、新興市場国では過去のインフレ経験が依然として大きな影響を与えています。実際にIMFのデータでは先進国では概して短期インフレ期待が1%ポイント上昇するごとにインフレ率が0.8%ポイント上昇するのに対して、新興市場国では転嫁は0.4%ポイントにとどまることがデータから明らかになっています。
インフレ予測における後ろ向き学習者・前向き学習者とは?
上記の違いは何によるものなのでしょうか?それは「後ろ向き学習者」と「前向き学習者」の割合です。
後ろ向き学習者とは、過去のインフレ経験を基に将来の価格変動を予測する人々のことを指します。彼らは主に過去により注目するため、今日の金利上昇が経済における需要を圧迫しインフレを減速させることになるという事実を受け入れないため、金融政策の有効性が低下します。
反対に前向き学習者は、将来の経済状況を予測するために、より幅広い情報に基づいて期待を形成します。彼らは、中央銀行の明瞭で信頼性の高いコミュニケーションを重視し、現在の状況だけでなく、将来の可能性に目を向けます。そのため、前向き学習者の割合が多いと、金融政策の有効性が高まります。
FRBの市場とのコミュニケーション
パウエル議長が言及しているように、これまでFRBは明確かつ丁寧なコミュニケーションを通じて、インフレ期待がより前向きになるよう働きかけることが出来たと解釈できるでしょう。適切なインフレ期待の形成により、金融政策の有効性をより高めることができ、ソフトランディングの達成向けて大きく貢献したとも言えます。
テキサスにおけるビジネスへの影響
テキサス州でも多くのビジネスオーナーがインフレの影響を受けてきたでしょう。依然として挑戦的な局面にありますが、インフレ抑制と労働市場の安定を通じて、テキサス州はさらなる成長の可能性を秘めています。ニュースレターでは今後も、関連するテーマについての情報を提供し、皆様のお役に立てるよう努めてまいります。
ソース記事:
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240823/k10014557541000.html
https://www.imf.org/ja/Blogs/Articles/2023/10/04/how-managing-inflation-expectations-can-help-economies-achieve-a-softer-landing
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20240823a.htm
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