同じインフレ率でもNYとダラスでは理由が違う?!- ②NYのインフレ



前回のニュースレターでは、供給サイドの人手不足がインフレを引き起こしている事象についてマクロ経済の視点から説明しました。今回は州経済の視点からニューヨークで起きているインフレ背景についてご説明します。

NYの人口減少と労働時間の減少が引き起こすインフレの波

人手不足により供給サイドが需要サイドに追いつかないためにインフレ圧力となっていることは前回のニュースレターでご説明しました。労働力の供給には、「労働者の数」と「労働者一人当たりの労働時間数」という2つの要素が存在します。各要素についてみていきます。

NYの人口減少の現状

近年、ニューヨークからの人口流出は顕著です。ペースは鈍化しているものの、20年4月以降、国外からの移民急増にもかかわらずNYの人口は計54万6164人の純減を記録しています。
各年の具体的な数値で示すと、2023年のニューヨークの人口は約1957万人で、過去1年間で0.52%の減少を記録。また、2022年には0.91%の減少が見られ、その前年も減少しています。これらのデータは、ニューヨークが持続的な人口減少のトレンドにあることを示しています。
ニューヨーク地域に限ってみると、人口減少=労働者数の減少傾向が続いているとも読み取れます。

NYの労働時間の減少の影響

ニューヨークでは労働者の週平均労働時間も減少しています。コロナ不況が始まった頃の2020年には33.9時間だった平均労働時間が、2024年には32.3時間へと縮小しました。約4%減少しており、月次データからみても右肩下がりの傾向が読み取ることができます。
https://fred.stlouisfed.org/series/SMU36935610500000002



労働時間の短縮実はアメリカ全体で広く起きている事象でもあります。特に学士号を持つ25~55歳の男性、高収入の層で労働時間が最も減少しています。統計データからは男性労働者の収入上位10%(年収14万ドル以上)は、2019年の週44.7時間から2022年には週43.2時間へと1時間半の減少がみられます。最新のアメリカン・タイム・ユース・サーベイによると、既婚男性が労働時間を減少させ、社交やリラックスに多くの時間を費やしていることが明らかになっています。これは、パンデミック後に人生の優先順位を見直し、ワークライフバランスを労働時間の削減という形で調整したことを示唆しています。

考察:ニューヨーク経済のインフレの波

ニューヨークでは近年続いている人口の純減による労働者数の不足+パンデミック後のワークライフバランス見直しによる労働時間の短縮によって、供給サイドで人手不足が発生していることがデータからも整合性が取れます。

労働者不足により、州内の需要を十分に満たすことができず、モノやサービスの価格が上昇する圧力がかかり、ニューヨーク州内でのインフレーションの一因となっていると考えられます。

では同様のインフレ率を持つテキサス州経済はどうでしょうか?次回のニュースレターで解説します!