テキサス新幹線計画に暗雲:連邦補助金の撤回と今後の展望
/日本の新幹線技術を活用したテキサス新幹線構想が、大きな転機を迎えています。
ヒューストンとダラスを高速鉄道で結ぶ壮大なプロジェクト「テキサス新幹線」は、約390kmの距離をわずか90分で移動可能とする計画として、長年注目されてきました。開発主体はテキサス州の民間企業「テキサス・セントラル(Texas Central)」で、日本のJR東海と日立製作所が技術支援することで、日本のインフラ輸出の象徴的プロジェクトとされていました。
しかし、2025年4月、アメリカ連邦政府はこのプロジェクトへの6390万ドル(約90億円)の補助金を撤回する決定を下しました。
▼なぜ補助金が撤回されたのか?
米運輸省の発表によると、プロジェクトの総事業費は当初の120億ドルから400億ドル超にまで膨張しており、「建設は現実的でない」との判断が示されました。アムトラック(全米鉄道旅客公社)を通じて提供される予定だった補助金が中止され、ダフィー運輸次官補は「納税者の資金の無駄遣いである」と厳しく批判しました。
▼バイデン政権の支援とその背景
2023年にはバイデン政権が鉄道インフラ整備を重視し、全国規模で21億ドルの補助金支給を決定。その一部としてテキサス新幹線も支援対象に含まれていました。同年12月には、アムトラックを通じて50万ドルの調査費支援も実施されていました。
しかし今回の補助金撤回により、計画の実現性はさらに遠のく形となりました。
▼日本の技術輸出への影響は?
このプロジェクトは、日本の東海道新幹線技術をアメリカで初めて商用導入する計画として、日本の国際的なインフラ輸出戦略の一環とされていました。特に高い安全性や正確な運行システムは、アメリカでも高く評価されていた一方、米国内の法規制や土地収用、政治的課題によりスムーズな進行が難航してきました。
▼今後の可能性と注目点
テキサス新幹線が今後再び軌道に乗るには、以下のような課題への対応が不可欠です:
費用対効果の再検証
民間資金や州政府の新たな支援
地元住民や自治体との合意形成
フェーズ分割やルート縮小などの柔軟な再構築案
同プロジェクトが完全に断念されたわけではありませんが、現状では再始動の見通しは立っていません。
▼結びに:日米間のインフラ協力の今後に注目
テキサス新幹線の頓挫は、日本の鉄道技術が海外展開する難しさを改めて示しました。しかし、技術力そのものの評価は依然として高く、今後も日米間でのスマートインフラ・グリーン交通分野での協力は続くと見られます。
新幹線技術の可能性がアメリカの大地を駆け抜ける日を、多くの人がまだ期待しています。
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