米国AIデータセンター開発を加速させるバイデン大統領令とテキサス州のエネルギー投資



2025年1月14日、ジョー・バイデン大統領は、米国内でのAIデータセンター開発を加速させる大統領令に署名しました。この新たな指示は、技術的優位性を確保するための国家的な取り組みとして注目を集めています。

国防総省(DOD)とエネルギー省(DOE)には、民間企業がギガワット規模のAIデータセンターやクリーンエネルギー施設を建設できるよう、連邦所有地のリースが指示されています。また、連邦機関には、許認可プロセスを迅速に進めるよう求めています。

テキサス州におけるデータセンター需要の急増と課題

特にテキサス州では、データセンターの急増が電力需要に大きな影響を与えています。ダラス・フォートワース地域では、AIや暗号通貨の需要により、2019年から2023年に商業用電力需要が13テラワット時増加しました。この地域は低コストの不動産と豊富な再生可能エネルギー資源により、グーグルやメタ(旧フェイスブック)などの大手企業を引き付けています。一方で、急増する需要は卸売電力価格の不確実性を引き起こし、太陽光発電や電力網接続の遅延といった課題も浮上しています。

エネルギー情報局(EIA)は、2030年までにデータセンターが米国全体の電力需要の11~12%を占めると予測しており、この需要を満たすためには持続可能なエネルギー投資が不可欠です。実際、テキサス州ではデータセンター事業者と太陽光発電事業者との電力購入契約(PPA)や、プロジェクトへの蓄電池の組み込みが進められています。

グーグル支援の「オリオン・ソーラー・ベルト」

こうした背景の中、グーグルが支援する米国最大級の太陽光プロジェクト「オリオン・ソーラー・ベルト」がテキサス州で稼働を開始しました。このプロジェクトは、バッカホルツに位置する3つの太陽光発電所で構成され、合計875メガワットのクリーンエネルギーを供給します。この出力は通常の原子力発電所に匹敵し、ダラス地域のデータセンターやクラウドコンピューティング需要を支える重要な電力源となっています。

グーグルは2040年までに世界中で160億ドル(2.5兆円)を持続可能なエネルギーに投資することを約束しており、このプロジェクトはその一環として大きな役割を果たしています。これにより、テキサス州での再生可能エネルギーの拡大が進み、データセンターの持続可能な運用が期待されています。



持続可能な未来への挑戦

バイデン大統領令を皮切りに、テキサス州をはじめとする地域では、データセンター開発と再生可能エネルギー投資が連携し、新たな成長モデルを模索しています。この動きは、技術革新だけでなく、環境持続性や地域経済の活性化にもつながる重要なステップと言えるでしょう。

最後に、ジェフィロコンサルティングでは、以下のようなダラス・フォートワース地域のデータセンター市場に関する記事を掲載しています。

  1. データセンターの建設が記録的な需要に対応するために増加(2023年3月6日)
    2022年、北テキサスでのデータセンタースペース需要が過去最高に達し、272メガワットの容量が使用されました。さらに、2023年初頭には255メガワットの追加容量が計画されており、同地域は全米第2位のデータセンター市場として成長を続けています。

  2. テキサス州ダラスのデータセンター市場:魅力と課題(2023年9月7日)
    ダラスは150以上のデータセンターを擁する全米第2位の市場として、不動産価格の手頃さや低い電力コストなどが評価されています。一方で、高温多湿な気候や電気料金の変動といった課題も存在しています。

  3. ダラス南部のランカスターに巨大なデータセンターキャンパスが建設予定(2023年12月25日)
    Skybox Datacenters LLCがダラス南部のランカスターに巨大データセンターキャンパスを建設する計画を進めており、地域経済への貢献が期待されています。

  4. 三菱商事とデジタル・リアルティ、ダラスで高性能データセンター開発へ―約400億円投資で新時代のITインフラ構築(2024年3月22日)
    三菱商事とデジタル・リアルティが約400億円を投じてダラスに2つのデータセンターを開発予定。このプロジェクトは次世代のITインフラを構築するものとして注目されています。

Source: Dart , The Verge, ロイター, AP News

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