同じインフレ率でもNYとダラスでは理由が違う?!- ①そもそもなぜインフレが起きているか



NYがダラスとならぶインフレ率になった

8/16ニューヨーク市のインフレ率がダラスと並ぶ高水準に達していることが報告されました。

ニューヨーク市会計検査院とニューヨーク連銀の調査によると、ニューヨーク市の消費者債務が家計収入を上回るペースで増加しており、返済コストが居住者に重くのしかかっています。この現象の背後には、インフレ率が高いことが挙げられます。

CPI-U(全都市消費者物価指数)でみると、ニューヨーク市とダラス市はどちらも過去12ヵ月間で4.1%上昇しました。しかし、同じインフレ率でありながら、その要因は州によって異なる可能性があります。今回はこの違いに焦点を当て、それぞれの都市におけるインフレの要因を詳しく探り、ビジネスオーナーや消費者が考慮すべき点について考察します。


そもそもインフレはなぜおきている?- 需要と供給

マクロ経済の観点からすると、インフレはモノやサービスに対する需要が供給を上回る場合に起こる現象です。現在アメリカで経験しているインフレのように供給が不足すると、価格水準が上昇し、長期的には消費者の購買力を低下させる影響があります。

では、なぜ今アメリカでそもそもインフレが発生しているのでしょうか?

今回のインフレの主な要因は、パンデミックによる供給側の混乱により発生した需給ギャップがいまだに解消されていないためです。米国経済は2020年春に経験したコロナ不況による景気の底から回復基調にあり、モノやサービスに対する需要は堅調に推移してきました。しかし、供給サイドは需要サイドに追いつくほど堅強に回復できていません。

なぜ米国経済の供給サイドは回復できていないのでしょうか?

最大の問題は人手不足です。コロナ不況下で解雇した従業員は元の水準に戻らず、多くの企業が人材を確保するのに苦労しています。この背景には、労働者がより良い条件を求めて職を離れる傾向があります。

この現象は「the Great Resignation」とも呼ばれ、堅強な雇用見通し、賃金の上昇圧力、リモートワークによる就業機会拡大などの要因により、労働者は全般的に労働市場での需要が高く、就職機会が多いということを知っているため、自発的に離職することもいとわなくなっています。



どれだけ人手不足か

2024年現在、アメリカの労働参加率は62.7%にまで低下しています。これは過去の水準と比較しても低い数値です。例えば、2020年2月には63.3%、さらに2001年1月には67.2%という高い水準を記録していました。

もし労働参加率が2020年2月のパンデミック前の水準を保っていたとしたら、200万人が追加の労働力としてカウントされることになります。しかし、現時点で全ての失業者がそれぞれの業界内で空いている仕事に就いたとしても、依然として何百万もの未採用のポジションが残ります。これは、ビジネスオーナーにとって非常に重要な問題であり、広範な労働力不足を浮き彫りにしています。

次回のニュースレターでは、ニューヨークとダラスのインフレ圧力について州経済の視点から掘り下げていきます。ハリケーンで仕事が減る?テキサスの失業率と今話題のサームルールとは?わかりやすく解説します!PART②

ソース記事:

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-15/SI9PIRDWLU6800

https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0672.html

https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/32088198a7e85d01.html

https://www.cnbc.com/2023/02/01/why-2022-was-the-real-year-of-the-great-resignation.html

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/12988.pdf

https://www.uschamber.com/workforce/understanding-americas-labor-shortage

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