ハリケーンで仕事が減る?テキサスの失業率と今話題のサームルールとは?わかりやすく解説します!PART①



8/5 米国株式相場は急落をしました。下落の発端は前週8/2に発表された経済指標からアメリカの景気後退懸念が高まったことでした。ただし、7月の雇用指標は純粋に労働市場で雇用数が伸び悩んだというよりも、テキサスにも直撃したハリケーン「ベリル」の影響や移民数増加の影響もありそうです。本当にこのままアメリカ景気は後退するのでしょうか?

今回はテキサス州の雇用状況と最近話題となっているサーム・ルール(Sahm rule)についての簡単な解説をお届けします!

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テキサスにも直撃したハリケーン「ベリル」が与える労働市場への影響

8月2日に発表された経済指標によると、7月の雇用増加は予想を大幅に下回り、失業率も上昇しました。特にテキサス州では、7月にハリケーン「ベリル」が直撃し、120万を超える世帯・企業が停電に見舞われました。このハリケーンによる悪天候により、43万6,000人が出勤できず、週平均労働時間も減少しました。ハリケーンにより通常通り出勤ができなかったことが、予想を下回る雇用増につながった可能性が指摘されています。

注目ポイント
・雇用増加
:予想17万5,000件に対し11万4,000件
失業率:4.1%から4.3%に上昇
出勤不能者数:43万6,000人
週平均労働時間:34.2時間に減少

今市場関係者が注目しているサームルールとは?

ハリケーンの影響もあり雇用が伸び悩んだアメリカですが、本当にこのままアメリカ景気は後退するのか?
今市場関係者が景気後退の1つの指標として注目しているものがサームルール(Sahm rule)です。

サームルール(Sahm rule)は、景気後退の初期段階を示す指標であり、米国の失業率の3か月移動平均が過去12か月間の最低3か月移動平均失業率よりも0.5ポイント以上高くなったときに発動されます。セントルイス連邦準備銀行がリアルタイムで発表しているサームルール景気後退指標によれば、8月2日に3か月移動平均が過去1年を0.53%上回り、このルールが発動しました。
https://fred.stlouisfed.org/series/SAHMREALTIME
※グレーアウトされている期間が景気後退期



経済と移民:サーム・ルールの解釈

1953年以降、サーム・ルールは計11回発動されましたが、そのうち10回はすでに景気後退に陥っていました。唯一外れた1959年も、サーム・ルール発動からわずか5ヶ月後には景気後退が始まりました。このように、過去にはサーム・ルールが景気後退を予測する有力な指標として機能していました。

しかし、今回は状況が少し異なるかもしれません。サーム・ルールの考案者クラウディア・サーム氏自身が、移民の動向がデータを歪めている可能性を指摘しています。これにより、サーム・ルールのシグナルを単純に景気後退のサインとして解釈することには慎重さが必要です。

例えば、以前ご紹介した記事によると、ダラス・フォートワース都市圏では2022年から2023年にかけて、1日あたり約278人の移民がDFWに移動しています。このような大規模な移民の動向は、経済指標に特有の影響を与える可能性があります。

次回の記事では、我々の住むダラスでも日常的に起きている移民の動向が経済指標にどのような特殊な状況をもたらしているのかについて解説いたします。お楽しみに!

Source:
https://www.businessinsider.com/sahm-rule-recession-outlook-indicator-triggered-unemployment-rate-jobs-report-2024-8
https://stayathomemacro.substack.com/p/sahm-thing-more-on-the-sahm-rule
https://fred.stlouisfed.org/series/SAHMREALTIME
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/TETOZJDUQVLYNFQ7FWCWKPS3YI-2024-08-02/
https://jp.reuters.com/markets/commodities/5WARABBHXBP7NCGQ22CFQG3DHE-2024-07-12/

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